桜の散るころ
私が育った場所は 甲山を背景に桜並木が続く美しい住宅地でした。
庭には大きなしだれ桜があり 通りに面してソメイヨシノが3本ありました。
今でこそ「学園花通り」なんてしゃれた名前がついていて
私はその道が大好きでバスには乗らず毎日歩いて通っていました。

毎年桜が満開になる度に いつか嫁ぐ日は桜の花道を通ってお嫁に行きたいと
ずーっと思っていました。
でもその夢は叶えられず 蕾の固い桜を惜しみながら私は嫁ぎました
私の母は合理的なのかドライなのか自立心が強いのか
小さなときから どんなことがあっても一人で生きていけるように
人に依存せず 自立し 何があっても人のせいにせず
全ての責任は自分にあると心がけなさいと
私が甘える隙を与えることなく とても厳しく教えていました。
ただし親として必要な物は惜しまずだしましょう
と なんの不自由もなく育ててくれました。
そんな母が新婚旅行先のホテルに手紙を送ってきていました。
その手紙には結婚式でみなさんが沢山祝福をして下さってとてもうれしかったこと
あなたを嫁がせてやっと肩の荷が下り親の役目が終わった・・・などなど綴られていて
最後に 家の桜の花がほころんできましたが今年はイヌ達と一緒に観ています
と締めくくっていました。
母が何を思ってわざわざ旅先に手紙を送ってきたのかわかりませんが
縁側で2匹の柴犬と寂しそうに桜を見上げている母の姿が浮かび
新婚旅行から帰ると慌てて実家に帰りました
「ただいま~!」と努めて明るく叫ぶと
「あら!いらっしゃい!ひとみちゃん!」と明るい顔
そして自分の部屋にいくと
私の残していた荷物はすべて処分され新しい家具が置いてありました
唖然とする私に
「あなたが来た時にはソファがベットになるから泊る事も出来るわよ」とあっさり・・・
普通お嫁に行ってもうちの子に変わりはないからいつでも帰ってらっしゃい
あなたの部屋はそのままにしてるから・・・とか言うて涙ぐむんちゃうの?
「だって~あなたはもう うちの子じゃないもの 帰ってこんといてよ」
あの手紙を受け取ってから今日までの私の思いはなんだったんだろう・・・
寂しいのを通り越してあきれて私は帰る事にしました。
いつも私を見送る時 行ってきまーすと手を振ると次にふりかえった時には
母の姿がありません。
「じゃ またね」
外は桜の華吹雪・・・
いつもふりかえると母がいないことに寂しさがこみ上げるのでいつの間にか
ふりかえらなくなった私。
随分通りを過ぎてふと ふりむくと母は玄関の門の外まで出て私を見送っていました。
私が手を振ると母は子供のように大きく手を振っていました。
何見てんのよ はよ入りや
愛情表現が下手な母と私・・・
毎年桜が散りだすと 華吹雪の中 母が短い手を振る姿を思いだします。
by acute-97 | 2012-04-14 19:01

