愛のある器
今年は5月の終わりにも梅雨入りしてしまいましたが
結局あまり雨が降らない毎日でしたね。
先日その梅雨の合間に奈良の長谷寺の近所にある
陶芸家の吉岡萬里さんの工房に行ってきました。
昨年の秋に友人の先輩にあたる萬里さんの個展があるから一緒に行こう!
と誘われ京都まで行ったのです。
今までも陶芸家の友人などの作品展は数多く見て来ていますが
萬里さんの作風はとても斬新で明るく 私好みの作品でいっぺんに気に入ってしまいました。
おまけにカップは私たち庶民でも手の届く範囲の価格で
どれもこれも欲しいところ迷いに迷いお魚の絵の描いてあるカップをひとつ購入しました。
毎朝コーヒーを飲むのにたっぷりと入る大きさ
持ち手のところが大きくつかみやすく安定感のあるフォルムに
あさの慌しい時間が過ぎ去り ほっと一息つくときに
コーヒーをなみなみと注ぎ両手でカップを持つと
不思議とウキウキと心弾む
さぁ~~一日頑張ろう!と思える感覚!
この前向きな感覚はなんだろうと思ってたその理由が今回
直接吉岡萬里さんにお会いしてわかりました。
長谷寺の近くという事もあって友人と牡丹の綺麗な季節にお寺巡りも兼ねて
万里さんに直接お会い出来たらなと思ってましたが
お互いの都合もあり今回牡丹の花は終わりアジサイにはまだ時期が早いということで
観光客もまばらで かえってゆっくりとした時間をすごす事が出来ました。
実は長谷寺へ来るのは16年ぶりでした。
と言うのも義父と最後に出かけた場所が長谷寺でちょうど今頃の時期でした。
その後、数週間ののち 心臓の病気である日突然 この世を去った父の事を
家族が長い間受け入れることが出来ず
毎年 牡丹が満開になった長谷寺のニュースなど目にすると
義父が 「来年牡丹を見にもう一度来たいけどわしにはこの階段はもう無理やなぁ」と
つぶやいていたのを思い出し心寂しく感じていました。
いつのころからか 暗黙の了解で私たち家族にとっては 行けない場所となっていました。
長谷寺正面からは立派な仁王門がありそこをくぐると
登廊があり三九九段の階段が続き 風雅な灯籠がつるされています。
たしか「しんどい しんどい」と言う義父の腰を押しながら
この階段を登ったなと思い出しながら
アナウンスでは一段一段を感謝しながらお上り下さいと流れ
自然と義父との思い出が 久しぶりに思い出され
こんなハチャメチャな嫁を ほんまようかわいがってくれはったなぁと
つくづく感謝し いま生きてはったら今の私を褒めてくれはるやろか?と
父に話しながら階段を上りました。
ずーっと来れなかったこの場所に 今年十七回忌を迎える父に呼ばれた様な気がしました。
国宝となっている本堂入口で今なら丁度 ご本尊 十一面観世音菩薩様の特別拝観が出来ます
といわれ なんといいタイミング!ラッキーなことでしょう!
ご本尊の入り口で お香を手にすりこみ身体を清めます。
私ら罪深過ぎて 頭からかぶらな清まれへんのちゃうん?!と憎まれ口を叩きながら
五色の腕輪をもらい腕にはめます。
これは観音様とのご縁を結ぶ輪だそうで 災いを除き安心を与えるとのこと。
二人とも神妙に腕にはめ お本尊へ入ります
薄暗いお堂の中10メーター余りの観音様はなんともいえないお顔をされていて
足をさすりながら願い事を唱えると叶うそうで
欲深い私たちは どっちの足かわからんから両方さすっとこう!
とつるつるに黒く光る足をなんどもさすりました。
長谷寺からほんと5分もしない小川のすぐそばにおしゃれな建物の工房があり
そこには満面の笑みの萬里さんが迎え入れてくれました。
お腹を空かしている私たちに面白い山の中のお蕎麦屋さんがあるねん!と
侍が出てきそうな細い林道を延々と登り たどりついいたのは
そば畑の広がる明るい平野で 何とも言えない波動のいい場所でした。
(私は特別な物が見えたりはしませんが・・・)
その蕎麦屋さんは地元の村の人たちがみんなでそば畑を育て
おばちゃんらが集まってそばを打ち
最初はプレハブ小屋から開いた蕎麦屋さんでした。
「お腹すいてるから大盛りにしょっ」とごちそうして下さったざるそばは
私好みのしっかりとしたそばの実たっぷりの麺で お出汁も少し甘めで
テラスでそば畑を眺めながら さわやかな風が流れとても気持ちよく
かなりの大盛りをぺろりと完食してしまうおいしさでした。
そして 博学の萬里さんの楽しいお話もたくさん聞き 面白くてたくさん笑い
心もお腹もいっぱいになりました。
そのお蕎麦屋さんのすぐそばにある荒神さんは
日本で一番最初に開かれた火の神様が祭られる神社で
農耕に使われていた水牛が祭られているそうです
お腹も一杯になり工房に戻ると 萬里さんの奥様がお仕事を手伝われてました。
お蕎麦屋さんでも知りたがり屋の友人は 奥様との馴れ初めから結婚生活に至るまで
根掘り葉掘り聞きだしていました。
「最初は向こうから言うてきてんで」とうれしそうにおっしゃる先輩ですが
今でもとってもかわいらしい奥さんですから出会われた時はさぞかし
ご自慢の彼女だっただろうなっと思い浮かべ
陶芸の道をめざす自分についてきてくれて18歳から苦楽を共にされてる奥様に
感謝してるよ と私たちにのろけられるのも無理ないなと思いました。
ご夫婦のやり取りを聞いているとホント仲むつまじく穏やかな空気が流れてました。
難しい陶芸の事はわからん!でもこんなんもありやろ!っと
迷いのない勢いのある自信に充ち溢れた
それでいてローマ字でププとわらかしてくれる関西人魂。
心が幸せで満たされてるからあんなに元気で楽しい器がつくれるんだなぁと
こちらまで 温かい気持ちに成らせていただきました。
帰り道
「ええな愛があるな」
「朝から晩までず~~と一緒やねんで」
「どうする? 明日からそやったら」
「・・・・・」
「いや・・相手の問題ちゃうやろ・・私は誰とも無理やで ずーっと一緒は・・・・」
「キムタクでもか???」
「ん・・・・・・・・・・・・・・」
吉岡満理さんの器はネットでも買えるのですが
ぜひ個展に行って作品を手にとって
出来たら満理さんに直接お会いして
元気いっぱい天真爛漫なエネルギーを感じて頂けたら 100倍器が素敵に感じれます。
吉岡満理展
6月15日~22日まで
galerie n 107 にて
羽曳野市野々上2-13-7
ヴィラージュレセナ101
072-934-1210
by acute-97 | 2013-06-15 18:55 | お出かけ